はじめに
本サイトは一橋大学大学院社会学研究科における先端課題研究14「ジェンダー研究の過去・現在・未来――女性学・ジェンダー研究のパイオニアに対する聞き取り調査を中心に」(2014~2016年度)の成果を公開するために設けられたデジタル・アーカイブサイトです。
本サイトの公開に先んじて、佐藤文香・伊藤るり編『ジェンダー研究を継承する』(人文書院、2017年)が同プロジェクトの成果として刊行されています。同書に収録されたインタビューは、協力者に確定していただいたトランスクリプトをもとに執筆担当者が既定の文字数に圧縮し、必要な注釈や補足を加えるなどの編集を施したものとなっています。本サイトでは、そのもととなったインタビュー・トランスクリプト全文およびインタビュー動画(ハイライト部分)を公開しています。
本プロジェクトについて
(1) 本プロジェクトの趣旨
本プロジェクトは、日本を主たる活動拠点としつつ、(1)女性学の立ち上げ、ならびに(2)社会科学の各専門領域でジェンダーやセクシュアリティの視角を取り入れた研究の開拓に取り組んでこられたパイオニア的研究者に対して聞き取り調査を実施し、これを通じて、ジェンダー社会科学の現下の到達点と課題群を確認し、今後のあり方を展望することを目的としています。
女性学の立ち上げに関わってこられた研究者はおおむね1930年代から'40年代に生まれ、いまや70代から80代の高齢期を迎えており、今日大学院で学ぶ20代から30代の学生はその孫の世代にあたります。女性学の黎明期を生きたパイオニア世代は、どのような課題に直面し、それをどのように乗り越えてこられたのか。わたしたちは、このプロジェクトが異世代間の対話となることを期待し、当事者の手になる回顧録や対談・鼎談・座談会等とはひと味違ったものになることを目指しました。
同時に本プロジェクトでは、女性学が元来有していた学際性、隣接領域への関心を若手研究者の間に培い、専門分野を超えた対話、交流を促すことを企図しています。日本の大学で女性学が初めて開講されたのは1974年以来、40年の歳月を経て、社会科学の諸分野でジェンダーやセクシュアリティの視点を取り入れた研究が蓄積されてきました。しかしながら、専門分化の進展に伴って、分野を超えて研究成果を共有する機会は減じてきたようにも思われます。そこで、本プロジェクトは、各専門分野で独自の領野を切り拓いてきたという意味での、パイオニア的研究者の方々に対しても聞き取りを行うことで、領域横断的な対話を促すことを目指しました。
(2) プロジェクト参加者について
本プロジェクトの参加教員は総勢8名、学生は修士課程1年から博士課程修了者まで延べ48名です。世代は20代から60代、ジェンダーやセクシュアリティ、出身地のみならず、学問的アイデンティティも様々で、自らを「ジェンダー研究者」として位置づけたことのない者も少なくはありません。各メンバーの教員・院生は女性学・ジェンダー研究への関わりも思い入れも多様でありますが、それぞれの問題意識を抱えつつ、横や後ろ、あるいは斜めからの関わりの中で女性学・ジェンダー研究を批判的に継承していくというプロジェクトの主旨に各々の意味を見出すことでこのプロジェクトに集いました。
(3) 調査協力者について
プロジェクトの本格始動の前に2度のプレ会議を経て、幾度も議論したのは「パイオニア」とは一体何を意味するのか、という点でした。調査協力候補者の氏名と生年を書き込み、ホワイトボードにマッピングしていく中で、それが単純な年齢階梯区分とはなり得ないことはただちに明らかになりました。また、当然のことながらマップは参加者の専門分野の偏りを反映して社会学と歴史学に大きく偏り、網羅的なものとはなり得ませんでした。実際の調査の過程では、この「パイオニア」の名づけは、時に謙遜、時に戸惑い、時に拒絶、時に反感を呼び起こし、たびたびトラブルをもたらすことにもなりました。試行錯誤を繰り広げながら、最終的にたどり着いたのが「ジェンダーやセクシュアリティの視角を取り入れて現在研究を行っている我々後身の参加者にとっての先駆者」としての「パイオニア」定義です。
毎年、スケジュールや対応能力の問題でやむを得ず落とさざるを得なかった候補者が多数出てしまったこと、また、調査協力候補者としながらも体調不良、あるいは故人となられて調査がかなわなかった方もいたことが悔やまれてなりません。対応できなかった重要分野は多々ありますが、ともかくも、本プロジェクトでは3年の間に総勢21名のご協力者にお話を伺うことができました。タイトなスケジュールで本プロジェクトのプロセスにお付き合いくださったすべてのみなさまに心より感謝申し上げます。
本プロジェクトが「継承に値するジェンダー研究」なるものをつくり上げてしまうことはわたしたちの本意ではありません。プロジェクトを担った者たちの限界とバイアスを克服するために、第二・第三のプロジェクトが立ち上がり、ひろうべき声を記録してくださることを、心から願っています。
本サイトのコンテンツについて
◇プロフィール/写真
本サイトに掲載されているご協力者のプロフィールは、『ジェンダー研究を継承する』の各章扉に掲載されたものと同じものです(執筆担当者は文末に記載されています)。
また、各ページに掲載されているお写真は、特記なき場合、すべてご協力者の皆さんのご厚意により提供いただいたものです。
◇インタビュー動画
本サイトに掲載されているインタビュー動画は、以下の5つの論点に即して、ハイライトとなる部分のみを抜粋したものとなっています(編集担当者は各ページ末に記載)。この論点は、調査を設計する際に「5本の柱」として、個々の協力者に即した質問項目を設定する際の指針としたものです。
- (1)学問の道を志すきっかけや経緯
- (2)関連課題を探究するようになったプロセス
- (3)研究途上での困難とその克服
- (4)関連分野の研究活動に対する思い
- (5)研究と運動や政治との関係
※なお、動画ファイルを、お使いのコンピュータやタブレット端末、スマートフォンなどにダウンロードすることはできません。また視聴環境によってはスムーズに再生できない場合もございます。ご了承ください。
※インタビュー時の環境によっては、音声が聞き取りにくい場合がございます。
◇インタビュー・トランスクリプト
本サイトに掲載されているインタビュー・トランスクリプトは、インタビューの録音データをもとに文字起こしを行い、ご協力者本人に確認いただき確定されたものとなっております。
なお、インタビュー・トランスクリプトのご利用は、学術・教育目的に限定いたします。ダウンロードに際してはジェンダー社会科学研究センターが発行するIDとパスワードが必要です。ご所望の場合は、以下の手順の通り申請を行ってください。
- (1)研究計画書を作成。(様式についてはこちらをご参考ください⇒docx/pdf )
- (2)こちらに掲載のメールアドレスに研究計画書を送付。
- (3)ジェンダー社会科学研究センター内で審査の上、IDとパスワードを発行
- (4)本サイトからトランスクリプトをダウンロード(PDF形式)
※申請に際しては連絡先をご明記ください。またジェンダー社会科学センターからのご連絡が受信できるようあらかじめ電子メールの受信設定をご確認ください。
※申請にかかわる情報はIDとパスワードの発行にのみ使用いたします。
利用上の注意
本サイトで公開している文書・画像・動画の著作権はジェンダー社会科学研究センターに帰属します。無断転載および複製などの行為はご遠慮ください。
本サイト内のコンテンツは個人的利用、または学術・教育目的の範囲内であれば、任意にご利用いただけます。引用に際しては公共的なルールに則り、引用元(このページのURLおよび参照日時)を必ず明記してください。また、本サイトにリンクを張る際には、サイト内への画像・動画といったコンテンツへの直接のリンクは避けてください。
本サイトの内容にかんする責任はすべてわたしたちジェンダー社会科学研究センターにございますが、ご意見等ございましたら、こちらに記載のメールアドレスよりお寄せください。