鄭 暎惠 Yeonghae JUNG
Profile
鄭暎惠(チョン・ヨンヘ)は1960年、東京都生まれ。
1979年慶應義塾大学文学部に入学。都市社会学を専攻し現象学的社会学の理論を学ぶ。日本人と在日コミュニティ、運動と学生生活、民団と朝鮮総連など、様々な分断線上の葛藤を抱えながら学生時代を過ごす中で、学者への道を志す。’83年同大学大学院社会学研究科修士課程へ進学。修士・博士課程を通じてアイデンティティや差別を主題として研究に取り組み、’87年には韓国・ソウルの延世(ヨンセ)大学大学院へ派遣交換研究員として留学。特に韓国の家父長制について調査する研究者のもとで学んだことが、ジェンダー理論に着手する契機となる。’88年博士課程単位取得満期退学。
1988年より広島修道大学人文学部専任講師として教鞭を執るかたわら、’91年慶應義塾大学地域研究センター所員、’94年カリフォルニア大学バークレー校客員研究員を務める。’99年より大妻女子大学人間関係学部助教授、2005年より同大学大学院人間文化研究科教授。’12年カリフォルニア大学サンタ・バーバラ校大学院招聘教授、’13年青山学院大学国際交流共同研究センター客員研究員等を歴任。
鄭は、民族運動(指紋押捺拒否や国籍確認訴訟運動など)のみならず外国籍住民(特に外国籍女性)を対象とした社会活動を幅広く展開しており、東日本大震災後には被害者の外国籍女性のための電話相談受付支援活動も実施。抑圧・差別と解放、マジョリティとマイノリティ、フェミニズムにおけるレイシズムの問題、在日コミュニティにおける複層的なポジショナリティなどを一貫して論じつつ、学術界と運動を往還してきた。個別に論じられやすいエスニシティ・レイシズム研究とジェンダー研究の論点とを結ぶ草分け的存在である。主著は『〈民が代〉斉唱――アイデンティティ・国民国家・ジェンダー』(岩波書店、2003年)。