有賀夏紀 Natsuki ARUGA
Profile
有賀夏紀(あるが・なつき)は1944年、東京都生まれ。2024年没。
お茶の水女子大学附属高校在学中に1年間のアメリカ留学を経験。1968年お茶の水女子大学文教育学部を卒業後、東京大学大学院社会学研究科国際関係論修士課程へ入学、’70年に同博士課程へ進学。’71年には再びアメリカに渡り、カリフォルニア大学バークレー校で修士号を取得。’83年には新渡戸フェロー奨学金を得てスタンフォード大学の研究員として渡米すると同時に、同大学歴史学部大学院博士課程に入学、’85年に帰国した。その後’96年に歴史学の博士号を取得。
有賀は、公民権運動やエスニック・リバイバルの運動の影響を受けて花開いた「底辺からの歴史学」、アメリカ社会史をいち早く学び、日本に紹介してその第一人者となった歴史研究者である。マイノリティの声に耳を傾けるその研究姿勢は、多文化社会カリフォルニアでの長い生活経験に根ざしたものであった。
1978年に東京大学教養学部教養学科アメリカ分科助手、’80年に埼玉大学教養学部講師として就職し、その後同大学助教授・教授として、2010年に定年退職するまでアメリカ研究の授業を担当した。また学会活動を通じ、アメリカ史・アメリカ研究の発展に寄与し、’08年から’10年までアメリカ学会会長を務め、日米の学術交流にも熱心に取り組んだ。主な著書に『アメリカの20世紀』上・下(中公新書、2002年)、共編著に『アメリカ史研究入門』(山川出版社、2003年)、『アメリカ・ジェンダー史研究入門』(青木書店、2010年)などがある。
有賀は日本におけるアメリカ女性史のパイオニアであり、最初に刊行した『アメリカ・フェミニズムの社会史』(勁草書房、1988年)で第8回山川菊栄賞を受賞。その後、山川菊栄賞について2015年まで選考委員として、またその後は山川菊栄記念会世話人として尽力した。同書は1989年に、日本語で書かれたアメリカ研究の優れた学術書に与えられる日米友好基金賞も受賞している。