勝方=稲福恵子 Keiko KATSUKATA=INAFUKU
Profile
勝方=稲福恵子(かつかた=いなふく・けいこ)は1947年、米軍政下沖縄の中頭郡県具志川村(現うるま市)生まれ。
1965年に上京、日大二高女子部に編入。’67年に早稲田大学第一文学部に入学。現代アメリカ文学を専攻し、アメリカ南部の作家William FaulknerのThe Sound and the Furyをテーマに卒論を執筆。’72年に同大学大学院文学研究科に進学。’83年に同博士後期課程満期退学。その後、日本大学芸術学部専任講師、早稲田大学法学部専任講師・助教授・教授、ニューヨーク市立大学大学院客員研究員を経て、2004年から早稲田大学国際教養学部教授。
勝方=稲福は1994年に早稲田大学で初めて女性学の授業を開講した。2000年に同大学でジェンダー研究所の立ち上げに携わり、’06年には琉球・沖縄研究所を設立。’12年に「沖縄女性学の構築――うないイズムの文化実践」で博士号取得。現在は沖縄女性の自分史の聞き取り調査を行いつつ、植民地的近代に対抗するための行為遂行的なトポスとしての沖縄女性学の確立に取り組んでいる。エスニシティとジェンダーの交差性という視点をもって沖縄研究の新しい地平を切り拓き、’02年に第24回沖縄文化協会賞(仲原善忠賞)を受賞。著書にはアメリカ文学を扱った『アメリカ文学の女性像』(共著、勁草書房、1985年)や『ジェンダーとアメリカ文学――人種と歴史の表象』(共著、勁草書房、2001年)と、沖縄をテーマとした『おきなわ女性学事始』(新宿書房、2006年)などがある。
新沖縄県史編集専門部会(女性史)委員を務めた『沖縄県史 各論編8 女性史』(2016年)では「『読む女・書く女』の出現――口承から書承へ」を執筆し、沖縄出身の女性作家、久志芙沙子(1903〜’86年)を取り上げた。久志が生きたのは、近代的同化教育が沖縄女性たちにも適用されるようになった時代。日本の「良妻賢母」イデオロギーと沖縄の古層的な太母像の間の矛盾の中で、それらに折り合いをつけながら生きた久志の蛇行の痕跡は、勝方自身の人生とも重なる部分がある。