もろさわようこ Yoko MOROSAWA
Profile
もろさわようこは1925年、長野県生まれ。2024年没。
本名、両沢葉子。専門学校入学者検定資格取得。北信日日新聞記者、鐘紡丸子高等文化学院教員、『婦人展望』編集者を経て、執筆活動に入る。
日本女性史はその出自からして在野の学問でもあるが、もろさわは在野の立場から優れた女性史を生み出してきた一人である。主著『おんなの歴史――愛のすがたと家庭のかたち』上・下(合同出版、1965〜1966年)の他、『信濃のおんな』上・下(未來社、1969年)は地域女性史の先駆的作品であり、本作で第23回毎日出版文化賞(文学・芸術部門)を受賞した。もろさわはまた、1970年代に日本に出現したフェミニズムからの問題提起を真摯に受けとめた希有な女性史家とも称される。『おんなの戦後史』(未來社、1971年)や『新編 日本のフェミニズム10 女性史・ジェンダー史』(岩波書店、2009年)に一部再録された論文等、その頃の著作には随所にウーマン・リブへの衝撃が記されている。
女性史がアカデミズムに市民権を得ていく一方、もろさわは一貫して在野に身を置き、公民館等での講演やジャーナリズムでの言論活動に従事した。それとともに『おんな・部落・沖縄』(未來社、1974年)など、部落や沖縄といった「辺境」への関心を強める。『ドキュメント 女の百年』全6巻〈1/2/3/4/5/6/〉(平凡社、1978〜1979年)は、在野の書き手による、日本の「底辺」や「辺境」に生きる女性たちの記録を収録・編集したものであり、もろさわ女性史の集大成と言えよう。
「辺境」への関心はもろさわを交流拠点の創設にも向かわせ、1982年長野県佐久市望月に「歴史を拓くはじめの家」(現「志縁の苑」)を、’94年沖縄県南城市玉城に「歴史を拓くはじめの家うちなぁ」を、’98年高知県長浜に「歴史を拓くよみがえりの家」を開設した。こうした功績を称えられ、2005年信毎賞受賞。